業績悪化による従業員の賃金切り下げの可否について

Q.このたびの世界不況の影響を被り、月例給与の切り下げは避けられそうにありません。可能でしょうか?

 


A.原則として、労働者との個別合意が必要です。


 ただし非常に難しい問題で、一律に論ずることはできません。後で手痛い思いをしなくても済むように、信頼できる専門家へ詳しく相談することをお勧めします。

 


平成20年4月1日施行の労働契約法によるのが妥当でしょう。
労働契約法には、労働条件を変更する際は、①個別同意(第8条) ⇒ ②就業規則の変更(第9条・第10条) と、考えていくことになります。

 

就業規則の不利益変更が合理的なものであれば、就業規則の内容により労働条件を変更できると、されています。

 

しかし何をもってして合理的というのか? 「合理的」の明確な基準はありません。個別具体的に見ていくことになります。

 

 

個別具体的に見ていくに当たっては、今までの裁判例が参考になると思われますが、「経営悪化による賃金切り下げ」の裁判例を見ると、どちらかというと経営者側に厳しい判例が多いような印象を受けます。

 

また、労働契約法第9条・10条の就業規則の不利益変更について、野川忍著「わかりやすい労働契約法」によると、『第10条の就業規則を変更してもそれに合意しない労働者まで拘束する趣旨のものではないというのが原則である』とされています。

 

もしも、少数の従業員が就業規則の不利益変更に反対しているにもかかわらず、経営者側が強引に不利益変更し、紛争や裁判に発展した時はどうなるのでしょうか? 最悪の場合、不利益変更した時点に遡って、切り下げた賃金額の全員分差額を支払わなければならないということも考えられます。

 

労働条件の切り下げの中でも、賃金や退職金については、高度な必要性が必要です。高度な必要性を個別具体的に検討していくことになります。法的要件や具体的手順など、信頼できる専門家に詳しく相談されることをお勧めします。